例年5月のGWを過ぎるころから、弟子屈にも桜が咲く季節がやってきます。静岡にいたころは、新学期が始まるころに桜が咲き、進学の年は新しい制服に身を包みながら登校していた傍らで桜の花びらが舞っていたように思います。静岡と道東では1ヵ月以上もの差がありますが、こういう季節や風土の違いが故郷の思い出となっていくのでしょう。今回はそんな日本人の心に寄り添う桜風景を弟子屈町周辺からお届けしたいと思います。
本州のソメイヨシノと違い、道東で見られる桜はエゾヤマザクラやチシマザクラなど花が開くと同時に葉も出てくるため、葉桜などと呼ばれたりもします。遠くから見るとピンク一色ではないので、ソメイヨシノとはまた違った風合いがあるのが特徴です。
しかし、木によって違いはありますが、たまに葉が出てくるよりも早く花が開花することもあります。そんな木でもすぐに葉は出てきてしまうので、満開のタイミングで出会うことができたら、ラッキーなのではないでしょうか。
また、北海道では低地で多く見られるシラカンバも同時期に新芽の頭を覗かせます。このように、まぶしい新緑と桜の花を観賞することができるのも特徴ですね。
同時期に目立つ花と言えばキタコブシも上げられます。桜よりも一足先にその白い花を咲かせており、桜の開花が例年よりも早くキタコブシの花が天候によってあまり傷んでいないと、白とピンク、新緑と3つの色を楽しむことができることもあります。
晴れの日は葉や花一枚一枚に影ができてしまいコントラストが濃くなってしまうため、個人的には曇りの日に出歩くことが多いのですが、たまには晴れの青空の中、お花見がてら歩くこともあります。きれいだなと桜を見上げていると、その向こうに月がこちらを見下ろしていました。
夜空に月が浮かぶ時間帯に桜を見上げます。こちらでは街明かりが一晩中輝くことはなく、夜桜を見るときは真っ暗です。唯一の月明りに照らされた桜は昼間の存在感とはまた違う雰囲気に魅了されます。
また月の出ていない夜では、月夜より更に暗い中で桜を見上げるのですが、ちょうど桜を見に行った場所では、ちょっと離れた信号機から発せられる赤、青、黄の光が桜を照らし、月明かりとはまた違った雰囲気を楽しむことができます。
5月も下旬に差し掛かると、標高の高い場所で桜の開花を確認できるようになります。近隣では摩周岳や西別岳などの登山道沿いの桜が確認しやすいです。
ただし、山なので風が強いからか、なかなか毎日通うことができないこともあり、満開のタイミングで訪れることがなかなか難しいのが登山道沿いで咲く桜たちです。この年も数日に一度通っていたのですが、もう少しだと思っていたらピークは過ぎてしまっていました。
それでも西別岳登山道沿いにある一本の桜はかなりいいタイミングで訪れることができました。初春にも関わらずとても暑い日だったこともあり空気は霞んでいたものの、それがよりほんわかとした雰囲気を醸し出してくれました。
そして5月末から6月頭にまたぎ見ごろを迎えるのが当エリアで最も標高の高い藻琴山です。摩周岳や西別岳より風が強いからか、桜の木自体の背丈も高くなく、こちらもすぐに散ってしまいます。気候により満開のタイミングが毎年微妙にずれるため、こうしてきれいに屈斜路湖と桜が見られるのはなかなか難しいです。ただ、標高の変わらないその他の場所と違い、標高が変わる登山沿いに生える桜は、開花のタイミングが木によって多少違うため、比較的長く桜を楽しみながら歩くことができると思います。
そしてまた、私たち日本人の心に入り込んだ桜の花びらは散り、
朽ちていきます。
静岡にいる頃はまだ若かったこともあり、それほど、桜を見た、なんてことはありませんでしたが、北海道に移り住み長い冬の後に訪れるとても儚い一瞬の輝きが春の桜にはあるように思います。その輝きが、自然と日本人の心に深く刻みこまれていくのでしょう。桜が咲いたらお花見でもしたくなる気持ちも分かりますね。
最後に、北海道では広い畑の真ん中に一本、桜が立っていることがあります。畑は私有地なので絶対に立ち入らないで、北海道らしい風景を楽しみましょう。
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