道東のど真ん中に、活火山として常時もくもくと煙を上げている山があります。摩周湖と屈斜路湖という2大湖に挟まれている「アトサヌプリ(硫黄山)」です。アトサは裸、ヌプリは山という意味だけあって、植物にとって厳しい環境が、高山の植林限界のような景色をみせてくれる場所です。今回はそんな硫黄山から立ち上る噴煙の姿をご紹介していきます。
☁噴気孔から立ち上る噴煙
硫黄山から立ち上る噴煙は硫黄の成分を含んでいるため、噴気孔に近づくと硫黄の香りが辺り一面で漂っているのが特徴です。
夏は南風、冬は北風が吹くことが多いため、噴煙も北へ南へと風に煽られてゆらゆらします。
硫黄山から車で3,4分離れた場所に川湯温泉街がありますが、夏の南風に乗って、温泉街までをも硫黄山のガスの匂いが運ばれてくると、天気が崩れてくると地元では言われています。
風が全く無いときは、一直線で上空へと立ち上っていき空へと拡散していきます。
☁噴煙がモクモクと見える冬
暖かい息を寒い外で吐くと白く見えるのと同じように、外気温がプラスになることがほとんどない冬は、噴煙と外気の温度差が激しくなり、夏と噴出している量が違うのではないかと思えるほどに、モクモクしている様子を見ることができます。噴気孔周辺は地熱が温かいため、雪が積もることも無いため、冬でも間近で立ち上る噴煙を観察することができます。
☁月明りに照らされて浮かび上がる噴煙
すると、気温の低い、月が出ている夜には、月明りに照らされて、星夜では全く見ることができない、噴煙がもくもくと立ち上る姿を見ることができます。
もちろん、風が吹いていると、煙がまっすぐ上空へ向かっていきません。しかし、無風のときはまるで蒸気機関車から出る煙のように陰影が付いて、どっしりとした硫黄山の姿となります。
☁噴煙が立ち上れずに横に広がる厳冬の早朝
硫黄山は屈斜路カルデラと呼ばれる地形の中にあり、天気のいい風のない厳冬の早朝だと、外輪山の麓よりも外輪山の上に登ったほうが気温が高くなる現象が起きます。
すると、まるで屈斜路カルデラに見えない蓋がかかっているかのように、硫黄山から立ち上る噴煙が横に広がっていく様子を見ることができます。
もちろん、立ち昇る煙すべてが横に広がっていくまでの条件がそろうのはまれで、多少は上空に上っていくことがほとんどです。
太陽が昇ると、空気は温められて一気に大気が動くのか、溜まったガスは少しずつ消えてしまうか、霧が濃くなって雲海になって消えていくか。どちらにしろ、条件がそろった早朝の、日の出前にだけ見られる景色です。
☁噴煙が少なく見える春~夏
雪も融けて、春になると、天気がよければ、昼間はとても暖かくなります。気温が低い時にはもくもくに見えていた噴煙は、まるで少なくなったのではないかと思えるほど、少なく見えるようになります。
しかし、さすがは北海道だけあって、夏でも朝晩は肌寒く感じるほど冷えることもあると、冬のようにもくもくと見えます。
☁低い雲の中に吸い込まれていく噴煙
夏には屈斜路カルデラの内部で霧(雲海)がかかることがあります。低地から見上げると雲に覆われているように見えるのですが、とても低い標高の雲のため、硫黄山の中腹から上が雲に隠れて見えなくなります。
太陽が雲に隠れて見えていないため、肌寒い朝となり、噴煙が立ち昇っている様子を見ることができますが、その煙は雲に突入していき、交じって見えなくなっていきます。
夏は屈斜路カルデラに雲海がかかることが多いため、高い頻度でこの景色は見ることができます。
☁朝陽夕陽に染まる噴煙
季節や気温、時間帯によって見え方の違う噴煙も、普段はモノトーンなのですが、唯一その世界に色を付けてくれる時間があります。
それが、日の出と日の入りのタイミングです。赤くなった太陽の光が差し込むその一瞬だけ、煙が色づいて華やいで見えます。
☁最後に
火山は普段とは違う景色を見せてくれますが、時に牙を向いて災害を引き起こします。それらを予測することはまだまだ難しいとは思うのですが、気軽に訪問できる場所だからこそ、危険と隣合わせであることを一人一人がしっかりと認識して、少しでも備えていくことがとても大事だと思います。そのうえで、これからも硫黄山などの火山の景色を見ていけたらと思います。
コメント