厳冬期に咲く花があります。寒い朝、日の出直後にだけ見られるのですが、もちろん、本物の花ではありません。その正体は木々に着いた霧氷。昇ったばかりの太陽に照らされ、光の色に染まることで、まるでピンク色の花が咲いているかのように見られるのです。そこで今回は、摩周湖での霧氷を見ることまでたどり着くまでと、そもそも霧氷はどんな時にできるのかを説明しつつ、霧氷がピンク色に染まった時の景色を一挙にご紹介していきます。
◇低地での霧氷遭遇率の高さ
自然現象のため、霧氷が広がる範囲も、成長度合いにも違いがあります。しかし、とりあえず霧氷を見るだけであれば、ポイントを何か所か抑えておけば、風が弱く、気温が低い天気のいい早朝には高い確率で霧氷に出会うことができます。特に、屈斜路カルデラ内部は、湧水地や湖、温泉、火山ガスなど空気中の水分が多い場所が多いため、霧氷を観察できるポイントが多いのです。
川湯温泉では、温泉の湯気が常時立ち上っているため、霧氷になります。
釧路川では、川の水温が外気温より高く、毛あらしが立ち上ると、川岸の木々が霧氷になります。
屈斜路湖畔では、湖面からの毛あらしや、湖畔から湧き出す温泉の湯気で、霧氷になります。
硫黄山麓では、活火山で噴き出しているガスが周囲の木々を霧氷にします。
水源が近くにある場所であれば、霧氷が着く可能性はとにかく高いのが屈斜路カルデラの内部です。
◇低山で霧氷に出会うには
始めは低地で霧氷に出会える確率がとても高いということは、摩周などの低山でも霧氷は同じように見られると思い込んでいました。しかし、低地での遭遇率には全く関係なく、低山で霧氷に出会える確率は驚くほどに低いのです。低地でびっちりと霧氷が着いていても峠の上は何もないことが多いのです。そこからは霧氷に出会うため、早朝の摩周に通う日々です。
早朝の摩周湖に通っていると、あることに気づいてきました。基本的に雪が降っていたり、曇っていたりすると、放射冷却が起こりづらく気温は高め(高いと言ってもマイナスなのですが)のため、低地では霧氷が見られません。しかし、前日から夜半にかけて雪が降っていたり、霧に包まれていたり、霧氷になっていないだろうと思われる朝に木々が霧氷になっていることが多いのです。
低地では、湖や温泉の湯気などの水分が木々に着氷しているのですが、低山では、雪雲中の水分が木々に着氷して霧氷となるのでしょう。そもそも低地と低山では霧氷の着き方が違うのでした。そこに気づいてからは、雪の日や摩周が霧に包まれている時をピンポイントで通い始めました。
◇朝陽に染まる霧氷
通っているうちに、ある条件で早朝の摩周湖を訪れると、霧氷がまるで桜の花が咲いたのではないかと思えるようなピンク色に染まることが分かってきました。その条件とは、上述したように霧氷が夜間に雪雲などで成長し、早朝までに一気に晴れ渡って太陽の光が差し込んだ時に、霧氷が朝陽に照らされてピンク色に染まります。
色々な条件が重ならないと、見ることができないため、真冬のシーズン中でも数回しかこの景色に出会えないのではないかと思います。なかなか出会えないからこそ、出会えた時の喜びは大きいものとなります。
◇霧氷を観察するに当たって
基本的に、霧氷が成長するということは、とても寒い中で観察しています。マイナス20度以下のこともあれば、風速10m以上の中のこともあります。防寒対策は必須です。また、今回紹介した条件が、もちろん外れることもあります。だからこそ、極寒の摩周湖にこれからも私は足を運び続けるのでしょう。
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