摩周・屈斜路カルデラの外輪山では、冬に見られる現象として取り上げられることの多い霧氷ですが、条件がそろえば冬以外の季節でも霧氷を見ることができます。なかでも、花や葉が芽吹く6月上旬に霧氷になると、冬に見られる霧氷景色とは全然違う姿を楽しむことができます。今回はそんな寒い初夏の様子をご紹介します。
そもそも初夏の外輪山で霧氷ができるには、私の中では3つの条件が必要だと思っています。1つ目は、「マイナスの気温であること」。2つ目は「霧が立ち込めていること」。3つ目は「北風が吹いていること」。です。
6月にもなると、南風が吹いている日は基本暖かいので、霧氷になることはありません。しかし、冷気を運んでくる北風が吹き、低地で気温が数度の場合、外輪山の峠ではマイナスになることがあり、そのうえで夏のような霧が立ち込めていると、霧氷が見られる可能性が高くなっていきます。ただ6月も中旬を過ぎると北風でも気温がマイナスになることが無くなり、霧氷は見られなくなっていきます。
冬の峠では、標高500m辺りから霧氷になりますが、初夏の峠では標高700mを越えた辺りから霧氷が着くことが多くなります。アクセスできる場所で言うと、摩周第3展望台や津別峠、藻琴峠、藻琴山がそれに当たります。
遠くからはまるで冬の霧氷のように白い化粧をしているように見えるのですが、近づいてよく見てみると、花や葉に氷のコーティングが施されているかのような姿を見ることができます。ただ、ここで私も気になっていることがあるのですが、初夏の霧氷はまるで雨氷のように透明なことが多いのです。
これは私の推測ですが、冬の霧氷は雪が混じる雪雲が氷を成長させていくために白くなっていき、初夏の霧氷は気温がマイナスだと言っても雪雲が立ち込めているわけではないので、過飽和している霧の水分がそのまま木々に着いて凍っていくために透明な雨氷のような姿になるのではないかと考えています。霧雨が着氷しているような状態なので、霧氷と雨氷の合いの子みたいな状態と言えばいいのかな。
また、5月も下旬になると、ちょうど標高700m辺りから深緑やサクラの季節となるため、6月に入ってから霧氷ができると、そんな花たちに氷の膜ができます。まるで氷の世界に咲いているかのような不思議な光景を見ることができます。
氷はその物の形に添って成長していくため、ハイマツなんかはまるで透明なサンゴ礁のようなフォルムを見せてくれます。ここまで氷が成長すると、重くて枝が下向きに垂れ下がっているため、藻琴山へ登山する場合は非常に歩きにくいです。
季節外れの霧氷は、少しでも気温が上がったり、霧が晴れて日が当たったりすると、とたんに地面にボタボタと落ちていく、とても儚い状態にあります。そのため、見られるのはその霧氷を作り出している天気の悪い真っ最中か、晴れ始める前の午前中早い時間の短い時間しかありません。
私もたまたま天気の悪い日に摩周の第3展望台や藻琴山に行く用事が無ければ出会うことは無かったでしょう。もちろん条件がそろっていても、見られないこともあるかと思いますが、天気が悪いからと言って自然の中へ出かけるのをやめてしまうのはもったいないんだなと気付かせてくれた出来事でした。
ただし、木々が凍るということは道路も凍っている可能性があるので、すでに夏タイヤに履き替えてしまっている場合には峠へ登るのはやめましょう。
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