【私の心に残る風景】白い衣を纏う森

私の心に残る風景 - Memorable Scenery -

秋の雪は重たい。12月に雪予報が出ていると、正直、降ってほしく無いという思いが前面に出てきてしまいます。もちろん東北など暖かい地方の雪に比べれば大したことではないのでしょうから、贅沢な悩みであることに違いはありません。ただ、秋の雪は大変だけれど、そんな考えを一変させてくれる出来事がありました。それからというもの、その日を思い出しては、もう一度訪れてみようかなと思わせてくれます。今回はそんなとある大雪の日のお話です。

その日は予報通りに天気が悪く、窓の外は風を伴った雪が降っていました。道路も通行止めの場所が多く、まだまだ降ってくる雪を前に除雪も早々に諦め、積もる雪を眺めていました。観光シーズン端境期の12月は忙しいということはなく、取り急ぎでやることもないので、雪が止んだ頃合いを見計らって、スノーシュー片手にふかふかの雪を楽しもうかと森の中へ出かけてみました。

その時に訪れたのは川湯温泉にあるアカエゾマツの森です。所狭しと針葉樹が立ち並ぶ森で、どんなに強風でも樹上を風が吹き抜けていくため、森の中では極端に風が弱くなります。雪は止んだものの風はまだ強かったこともあり、この森を選んだのですが、足を踏み入れて間もなく、まるで呼ばれていたのかもしれないと思わずにはいられない景色が目の前に広がっていました。

どこを見渡しても白・白・白。

この時はまるで白銀の世界に迷い込んだような錯覚に陥ってしまうのではないかと思えるほどの景色が歩き始めてすぐの場所に広がっていました。雪がほのかな光を反射し、普段の薄暗い森からは想像できないほど明るく、森の奥まで続く白銀世界。

普通に雪が降るだけでは、どうしても枝葉が樹上で雪を受け止めてくれるため、木の幹まで真っ白く染め上げてくれることはありません。また、強風だったとしても、雪が湿っていなければ、ここまで幹に纏わり着くこともないでしょう。

晩秋の吹雪だったからこそ見ることができた景色でした。山登りをするわけでもなく、駐車場から少し歩くだけで見られるというだけで同じような条件の日に来れば、また見られる可能性が高いなと思わせてくれる出来事でした。

ちなみに、どこまでも続く白銀世界も面白いことに、森をある程度進むと、幹の半分には着雪していないことに気づきます。

さらに進んでから振り返ると、全く幹に着雪が見られません。

風向きにより、着雪する幹の方向に違いがあるようです。東北海道では、吹雪の日は基本北風のため、この森の入口から奥を見ると真っ白い衣を纏っているように見えることがほとんどでしょう。

その後、またあの景色が見たいなと、発生条件を鑑みてみると、2つの条件が思い浮かびます。

○風が強く大雪であること 吹雪、と言い換えてもいいでしょう。

○湿雪であること

これなら、初春の頃の雪でも同じことが起こるのではないかと思い当たりました。そこで4月のとある大雪後に訪れてみると、やはり秋と同じように、片側にだけ着雪している場面に遭遇することができました。しかし、以前に見たような白銀世界とまではいきません。降雪量や風速などによっても、纏う雪の量に違いがあるようです。

それでも同じように歩を進めて横を見やると、片側にのみ雪がへばりついていますし、

振り返ると、全く雪が着いていません。

秋や春は、昼間気温が上がると暖かいため、アカエゾマツが纏う白い衣もすぐ融けてしまい、あっという間に元の姿に戻ってしまいます。

初春と晩秋、それも大雪直後にだけ見られる白い衣を纏う森。重たい雪だけれど、新しい雪を踏みしめる感触に、山を登らなくても見られる樹氷とは違った着雪景色。大雪時は道路が閉鎖されてしまいますし、吹き溜まりや除雪作業などもあり、訪れてみたいと思ってもなかなか思うようにならないかもしれません。それでも、タイミングが合えばまた訪れてみたいなと思わせてくれるそんな空間でした。

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