【生き物たちの気配】硫黄山麓を飛び回るハバチ

過去掲載

硫黄山の麓に広がるつつじヶ原。川湯温泉から硫黄山までの片道2.5キロほどの間に植生が移り変わっていく様子を観察することができる貴重な場所ですが、ここ数年である異変が見られるようになりました。まだこれといった大きな何かが起きていないと思いますが、何が起こっているのか、その一端を垣間見てみましょう。

記憶は曖昧でまだ写真を始めたばかりで記録が無いのですが、変化の始まりは2014年だったと思います。つつじヶ原でもハイマツ帯に差し掛かると、今までも多少は着いていたのですが、茶色い粒粒が固まった何かがハイマツの先端についているのが目立つようになりました。ほろってみても特に何かが中でうごめいているわけでもなく、きっと何かの虫の糞かいか何かだろうと(今思うとガイドとして調べないまま終わるのはどうかと思うけど…)あまり気にも留めていませんでした。

しかし、そこから変化は始まっていたのかもしれません。その翌年も茶色の何かはありました。そして2016年。硫黄山麓はその硫黄による影響から枯死しているハイマツが横たわっているのは周知のごとくですが、明らかにかなり広い範囲でハイマツの先端だけが枯れているものが多くなったように感じたのです。周囲の人たちに聞いても特にそんなことないんじゃないかなぁと言われてしまい、そうなのかなぁと…、またもその他業務に追われ、原因究明せずに放置してしまいます。

そして、その年がやってきます。2017年。イソツツジの花のシーズンが終わり真夏になると私は訪れることがめっきり少なくなってしまうのですが、ある時、硫黄山から川湯温泉までの道を車で走っていると、普段は緑色にしか見えないハイマツ帯が茶色く見えるではないですか。

広範囲の写真を見てみると、分かりづらいですが、全体が緑色のはずのかぶと山麓に茶色い点々が広がっています。

遠くから少しずつ、近づいていきます。

まだ紅葉には早いですが、茶色くなっているのが分かるでしょうか。

この写真までくると分かりやすいですね。この状態を受けて、そもそもこれが何なのか、何によるものなのかの調査が2018年から始まりました。

まずこの茶色の粒粒の正体は糞かいであることが判明。その後、ヒラタハバチ科の昆虫の幼虫がその正体であることが判明しました。

2019年5月下旬にはそのハバチが卵を産み付けている様子や、

その卵が一斉に還りその幼虫たちがハイマツの葉を食べているところも確認することができました。

その後はこの状況が大きく変化していくのかの調査が引き続き行われるはずです。ただ、昨年はそこまでハバチが大量発生し糞かいだらけになることは無く、ハイマツも枝先が枯れているものが多く見られたものの枯死してしまうほどではなさそうに見えました。2018年が数年に一度のハバチの大量発生年だったのかもしれません。依然としてハバチは飛び回りその子孫を残しているので、2020年の今年もまた5月末になったらハバチを見ることができるでしょう。

幼虫たちが糞かいを作るところも観察してみたいですし、その後幼虫たちは一度地面に潜っているという話も聞いているので、その様子も見てみたいと思っています。

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