【今月の一冊】「センス・オブ・ワンダー」

レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」は、自然環境に興味がある人であればほとんどの人が知る著書だと思いますが、“自然と触れ合う”ということの原点に立ち直れる一冊でもあると思っています。描かれているフィールドが彼女の出身地であるアメリカのメイン州なのですが、北海道と緯度がほぼ同じで登場する植物が似通っている部分もあり、道東の自然が好きな方はより身近に感じながら読むことができる本でもあります。

この本はアメリカの海洋生物学者かつ作家である彼女が甥(原文通り)との自然探索の中で感じた自然の美しさと、その感性の尊さを描いています。特に、子どもと一緒に観察をすることで、澄み切った感性を養っていくことの重要さも大きなテーマとして伝わってきます。

確かに、小さな子どもたちと一緒に野外で活動すると、私たち大人が気づくことのなかった小さな虫やキノコ、実、そして空模様の一つひとつに興味を示します。興味対象はそれぞれですが、一緒に観察する大人としては、著者が言うように植物などの名前を教えるのではなく、それに一緒に感動し、一つでも多くのことを発見する手助けをすることの方が心の豊かさに繋がっていくような気がします。もちろん、名前を覚えるに越したことはありませんが、興味さえあれば名前などすぐに憶えてしまうものです。

昨今は「子どもたちに自然の中で遊ばせて、いろんな体験をさせたい」という考えの方も多くなってきているように感じます。その中で、「自然に触れさせるにはまずどうしたらいいかわからない」という方も多くいるかと思いますが、何も難しく考えずに、まずは一緒に外に出るだけでも十分だと思うのです。たとえ住宅街であったとしても、アスファルトの間から健気に咲くタンポポに触れてみたり、雲の形を見てみたり。

もちろん、非現実的な気分を味わうために海や山、森へと出かけるのも魅力的な経験ですし、その印象というのは日常とかけ離れれば離れるだけ強くなるものです。ですが、“自然”というのは意外と身近にあるということを小さな時から意識してもらえると、より感受性が高まると思っています。

さて、今までは子どもの感性に対してでしたが、大人はどう自然に触れあっていけばいいのか。答えなんてものはありませんが、著書の中で私が印象に残っている文章をあげます。

以下、引用(p28)

わたしたちの多くは、まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識しています。しかし、目にはしていながら、ほんとうには見ていないことも多いのです。見すごしていた美しさに目をひらくひとつの方法は、自分自身に問いかけてみることです。

「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら? もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」と。

基本的に旅行は限られた時間の中で行動しているため、自分が理想とする景色やものに出会えないことも多いのが事実。そこで「期待外れ」と思うか、「目をひらいて」見た景色が自分にとってどう見えているか、と考えてみるとまたその景色への印象が変わるのではないかと思っています。

その自然の美しさに気付けたとき、心が震えたときこそが、きっと誰にでも潜在する「センス・オブ・ワンダー」が芽生えたときなのでしょう。

 

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