【コラム】インタプリテーションとは

一概に自然ガイドをすると言っても、人がすることですし、自然の中では季節や時間帯などによっても見られるものが変化するため、案内の仕方や内容は本当に千差万別です。私のガイドも毎回全く同じ内容で行われていることはなく、その時々の一瞬を大事にするように心がけています。ただ、私がガイドをする上では基礎となっていることもあり、それがインタプリテーションと呼ばれる概念となります。常にそれを意識できているわけではないので、今回は私は普段こんなことに気を付けるようにしているよ、というお話をしたいと思います。

そもそもインタプリテーションとあまり聞きなれない言葉が出てきますが、直訳すると通訳です。環境系の書籍などではよく、伝えるための手法や定義などが解説されていますが、私は「目の前で起こっている事象を読み解くこと」だと思っています。読み取れなければ、伝えることはできないからです。

ただ、私もそうですがガイドは啓発業務ばかりで、調査業務を行っていることはあまりありません。ではどうやって目の前に起こっている事象を読み解くのか。それは調査の報告会に足を向けたり、環境雑誌に目を通すことも大事ですが、ガイドなりに自ら観察し続けることが最も大事なことだと思っています。伝える手法に凝ることも大切ですが、それ以上に自然の中で過ごすという経験こそが案内する際に最も重みの乗った言葉やストーリーとなって聞き手の心に深く沁み込んでいくのではないかと考えています。それがストーリーテリング(Story Telling)となっていくわけです。

ただ、別に観光だけで十分なのであれば、ガイドは必要ありません。そもそも人は信念(Belief)があると、それが態度(Attitude)となって現れ、それを継続していくことで自らの習慣(Behavior)となっていくと考えられているようです。そのため、自然の中でのインタプリテーションでは様々ある自然環境に対する「信念」や「態度」、「習慣」を呼び起こすためのきっかけ作りなのだと思っています。

その上でインタプリテーションでは、ガイドと参加者、お互いに成長していくことを目指しているのだと思っています。人はいきなりある分野で秀でることはありません。少しずつ成長していきます。それは案内するガイドも、旅行をする旅行者も同じことが言えます。ここではエコツーリズムに合わせて4つに分けていきたいと思います。

1.自然を目的地にした旅行に興味があるが、自然の中に行くことができればいいストリーカー(streaker)。展示や解説などを読み聞き流す傾向にあります。

2.自然の中で時間をかけるストローラー(stroller)。自然環境や生態系に興味があり、展示や解説などを読み聞きする傾向にあります。

3.自然の中で何かを学ぼうとするエジュケイテッドツーリスト(educated tourist)。その土地の自然や文化に興味があり、展示や解説などをしっかりと読み聞きする傾向にあります。

4.エコツーリズムの仕組みに関心があり、その土地の自然や文化を学ぶことはもちろんのこと、その概念に沿うように旅行するエコツーリスト(ecotourist)。

それぞれの参加者にはそれぞれの性格があるので、ガイドはインタプリテーションにおいて、その参加者に合ったストーリーや内容を構築していくことが大切なのですね。

ではその内容を構築するには何に気を付けるべきなのでしょうか。気にしなければいけない事柄がいくつかあるので順を追って説明したいと思います。

まず、今回のインタプリテーションではテーマとして何を伝えたいのかをはっきりさせます。それは、訪問する場所により変化もするでしょう。例えば、火山を訪れるなら火山、湖を訪れるなら湖など、様々なことをテーマ(Thematic)として挙げることができます。

そして、1つのテーマでも、その中には様々なコンテンツがあります。火山や湖の成り立ちや周辺の特異な植生や生態系などテーマ以上に多岐に渡るはずです。その内容を順序立てていくことで、より理解しやすい構成(Organized)を組んでいくことができます。

また、そのコンテンツが多岐に渡りすぎると、結果テーマとして伝えたかったことが何だったのか分かりづらくなってしまうため、構成するコンテンツは互いに関連(Relevant)している必要があります。

最後に、それらをただ伝えただけではなかなか人の記憶には残らないため、散策やトレッキング、登山、カヌー、乗馬など体験(Entertain)を通して実施いくことで、人の記憶に刻み込むことでガイドも旅行者も成長していくことができます。

今回はあくまで自然ガイドでのお話となりましたが、インタプリテーションは別にガイドだけではなく、散策路などの看板を作成する時や資料を作るときなど、何事においても同じように考えて構成していくことで、関係する皆さんの理解をより深めていくことができます。感覚で先に進めることもありますが、毎回行き詰ってしまう時は、整理立てて考えるための手段として用いてみてもいいのではないかと思っています。

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