屈斜路湖が凍り始めると、湖面の自然現象が見られるようになるサインです。結氷が浅瀬から始まり、凍ったり砕けたりを繰り返しながらも結氷が広がってくると、膨張収縮を繰り返す氷の奏でる音が響き渡ります。この独特な音が聞こえてくると、今冬はどんな景色に巡り合えるのかと心が躍り始めます。しぶき氷や寄せ氷、フロストフラワー、アイスバブル、霧氷など様々な冬景色を楽しむことができますが、その中でも、御神渡り現象は冬の屈斜路湖では最も注目が集まる現象の一つなのではないでしょうか。 しかし、屈斜路湖の御神渡り現象は毎年きれいに見られるわけではなく、その年の結氷状態により成長度合いは大きく左右されます。今年2020年はそもそも湖が全面結氷しなかった珍しい年でもあり、御神渡り現象が成長し始めた瞬間もありましたが、すぐに見られなくなってしまいました。近年では、2019年が比較的きれいに見られた年でしたので、昨年2019年に見られた御神渡り現象についてスポットを当ててみたいと思います。
◆ 2019年の様子はこうだった
御神渡り現象は全面結氷してから通常2週間経ったころにピークを迎えることが多いです。2019年の屈斜路湖は透明な氷では無かったものの、雪を多く含むことなく全面結氷を迎えました。その後も湿雪が降ることは無く、順調に氷は膨張収縮を繰り返してくれたお陰で、結氷後2週間後には立派な御神渡り現象を観察することができました。その様子を時系列で見てみましょう。
□ 2月9日 屈斜路湖全面結氷
画像は2月8日日の入り直後の美幌峠から見た屈斜路湖です。8日には湖水は見られなくなり、丸一日その状態が続けば全面結氷したと言ってもいいだろうという非公式な見解もあり、8日にはすでに結氷していましたが、2月9日に全面結氷したということになっています。正直私は、もう壊れることは無いでしょうと、8日夕方には美幌峠から、9日は藻琴山から全面結氷した屈斜路湖を見下ろしに行っています。
□ 2月12日 結氷に亀裂が入る
全面結氷から4日後。凍った湖面に湖畔から沖に向かって亀裂が入っていました。ここ数年ではこの場所に御神渡り現象ができることは無く、膨張収縮のバランスが悪くて一度浸水してしまったのかなと偶然撮影していた場所です。裂け目からは氷の上に水が浮かび上がっています。避ける前なのか後なのか分かりませんが、氷上のキツネの足跡が浸水していて、風も無かったため、水の表面に空に浮かぶ雲が映りこんでいたのが、とても印象的でした。
□ 2月23日 競り上がりがピークを迎える
そろそろ御神渡り現象がピークを迎えているかもしれないと様々な場所を訪れていました。2019年は普段見ることができない場所でも氷が盛り上がっている場所があり、先日氷に亀裂が入っていた場所でも御神渡り現象ができているのが遠くから見ても分かるほどに競り上がっていました。近づいてみると、やはり氷丘脈となって沖に伸びています。氷の競り上がり自体はあまり高くなっていませんでしたが、それでも奥の方まで続いている様子はまるで足跡のようですね。
□ 3月1日 変化なし
その後、御神渡り現象の噂も広まったのか訪れる人が増え、手前の方は氷上が足跡だらけになってしまっていたので、湖畔から遠くだけの画像となってしまいました。何度か訪れてみましたが、ある程度の雪が氷上に乗ってしまっていたからなのか、23日から大きく成長しているということはありませんでした。
□ 3月26日 まだ残っていた御神渡り現象
大雪が降ったりすると、雪の断熱効果で氷の膨張収縮が小さくなり氷の競り上がりも低くなっていきます。また、3月下旬にもなると氷もだんだんと緩み始めさらに御神渡り現象は見られなくなっていきます。しかし、2019年は氷が安定していたからか、暖かさで屈斜路湖の氷も少しずつ解けてきているはずの3月下旬ごろ、まだ御神渡り現象は見られました。その後の様子は確認できていませんが、4月上旬には屈斜路湖は解氷したので、きっとこの後すぐに消えて行ったのではないかと想像されます。
□ 2019年の御神渡り現象を振り返ってみて
透明な氷でできた氷丘脈までとはいきませんでしたし、ヒトの背丈ほどの高さまで氷が競り上がることもありませんでしたが、2019年は比較的状態よく様々な場所で御神渡り現象を観察することができました。長く見続けている方には敵いませんが、私が写真撮影を始めた2014年からの6年間では、足跡のようにここまで縦横無尽に御神渡り現象が発生したのは初めてです。その冬の気温の変化や風向き、結氷状況などにより、その発生場所や仕方は大きく変化するのでしょう。なので、2020年以降もまた何か気づいたことなどがあれば、このブログで紹介していけたらと思います。 最後に、せっかくなので、私の記録に残る2014年からの御神渡り現象の様子をご紹介したいと思います。
◆ 近年の御神渡り現象はこうだった
□ 2018年
2018年は摩周湖が5年ぶりに全面結氷して摩周湖ばかり通っていたため、これしか記録が残っていませんが、記憶ではこの後すぐに大雪が来て御神渡り現象は成長することなく終わってしまった年だったはずです。
□ 2017年
氷は2019年以上に雪を纏い白くなっていたものの、湖畔から中島に向かってきれいに御神渡り現象が発生した年でした。湖畔に寄せられる氷も大きく、寄せ氷がまるで氷丘脈のようになっていたのを記憶しています。
□ 2016年
2016年はまだこのブログも始めていないため、当時を振り返る材料がありませんが、唯一撮影されていた数カットのうちの一枚がこれです。これだけ御神渡り現象の兆候があったのに、その後を追いかけていないということは、大雪ですぐに見られなくなってしまったのではないかと予想されます。
□ 2015年
この年だけ唯一全く記録が残っていません。御神渡り現象が発生していたかどうかも不明です。多分全く見られなかったのではないかと思っていますが、どうだろうか。
□ 2014年
私のストックの中で最も古い年のものになります。2014年は2月に湖面が雪を纏い過ぎてしまい、もう御神渡り現象は見られないだろうと思われた年でしたが、結氷が緩み始めた3月上旬、急に朝晩の寒暖差が激しくなり、氷の膨張収縮が起きて、季節外れの御神渡り現象が見られた年でした。
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