ツーリズムについてお話ししてきましたが、実際にその考え方を成立させるためには、商売として仕組み作らなければ、机上の空論になってしまいますし、持続して需要と供給を満たしていかなければ、生活していくことが困難になってしまいます。そこで今回はツーリズムを成し遂げるために販売する商品=ツアーについて取り上げてみたいと思います。
そもそもツーリズムにおけるツアーとは、私が考えるツーリズムの定義にも出てくる、旅行をする上で必要な交通や宿泊、飲食、体験などをコーディネートし、それらを提供することで対価を得ることです。その役割を担うことができるのが、旅行会社などの旅行業者です。私自身、旅行業取扱管理者の資格を有しているわけではないため、細かく説明できませんが、旅行業者として登録された組織が、有資格者の元、商品を販売しています。
その商品には、宿泊や交通、飲食などのサービスを卸値や手数料という形で仕入れ、単品で手配するだけではなく、それらをパッケージにしてツアーとして販売する、旅行者の要望に答えて企画するオーダーメイドツアーとして販売するなど、多岐に渡り商品が取り揃えられています。
単品の手配はさておき、販売されているツアーに参加するということは、日帰りのツアーでも○泊○日のツアーでも、集合したら後は解散まで決められた旅程に沿って旅行をすることができるということが、参加者にとっての最大のメリットなのではないでしょうか。しかし、特に興味のない訪問先が組み込まれていたり、泊まりたい宿泊施設に泊まれないなどの自由が効かなくてもどかしい、という側面も併せ持っています。そのため、インターネットで自由に現地の交通や宿泊施設にアクセスすることができるようになった昨今、ツアーに参加するよりも個人で好きなように行程を組んで旅行にいく個人旅行者が増えているのもまた必然の経過であるように思います。
ただ、現地サービスをパッケージにして販売するということは、旅程を組み変えたり、中身を入れ替えたりすることで、無限にその形を変化させることができるということでもあります。大人数で催行されるツアーなら自分で巡るよりも料金が安くなったり、少人数で催行されるツアーなら料金は高いけど、サービスが充実していたりと、日々、提供者も参加者も試行錯誤を繰り返しているんですね。
さてここで、現地で受け入れる側に立ったお話しに移っていきたいと思います。そもそも、ツアーでも、個人旅行でも、その旅行先に行ってみたいと思わせる何かがなければ、受け入れ側が選ばれることは無いですし、選ばれたとしても、思い出深い印象を持ってもらえなければ、次回に繋げることもできなくなってしまいます。
もちろん風光明媚な景色や観光地を訪れてみたい、あの雰囲気のお店で食事がしたいなどの気持ちはこれからも無くなることはないでしょう。しかし、ある程度新しいサービスや仕組みが出尽くしてきた現代では、他とは違う、最もヒトの印象の中に残るものとして取り上げることができる何かが必要なのではないでしょうか。私はそれは現地に住まう人なのではないかと思っています。
あの人がいるから、あのお店に行こう、あの人がいるから、あの施設に行こう、あの人がいるから、あの土地へ行こう、という気持ちもまた無くなることはないでしょう。ツアーでは添乗員だけではなく、発地からガイドが同行してくることもありますが、それでは、受け入れ側は、既存のハコモノで勝負するしか無くなってしまい、他と差別化を計ることが難しくなってしまいます。
もちろんエコツーリズムとは?でも取り上げましたが、受け入れ側は常に新規顧客を狙わなければならないというハンデを背負っているため、ハコモノだけでも難しいのに、さらに十人十色である人で選ばれるなんていうことがどれほど難しいのかも想像に難くありません。しかし、その役目を担うことができるのが、現地に住まうガイドの役割なのではないかと思っています。
そこで次回は現地に住まうガイドの役割について触れてみたいと思います。
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